メンバーが複数のプロジェクトを兼務することは、よく見られる状況です。どうすれば、メンバーがフルコミットでない場合でも、プロジェクトの進捗を把握し、リスクを管理しながら成功へと導けるのでしょうか?
この記事では、そんな兼務メンバーのコミットメント比率に基づく具体的な評価方法、リスクを減らすためのバッファ設定などを紹介します。。
この記事を読むことで、兼務メンバーを含むプロジェクトの管理に必要な知識を得られ、複数の優先順位を持つタスクを効果的にコントロールするための具体的な手法を学べます。ぜひ最後まで読み、あなたのプロジェクト成功のために役立ててください。
結論
各メンバーの大まかなコミットメント率、実作業割合を設定することです。
兼務メンバーの進捗管理の難しさ
複数プロジェクトで優先度決めるのは難しい
ほとんどのプロジェクトでは、メンバーがいくつかのプロジェクトや既存業務を同時に担当することが多いです。
しかし、このような状況では進捗を正確に把握するのが非常に難しくなります。例えば、AさんがプロジェクトAとBを兼務している場合、どちらにも集中できず、それぞれのプロジェクトで進捗が遅れがちになります。
複数の優先順位の異なるタスクに取り組むことで、切り替えコストが発生し、生産性が下がることがよくあります。メンバーが使える時間が限られているため、プロジェクト全体の進捗状況を正しく理解することができず、将来の見通しが悪くなり、リスクが増加することがあります。
集中時間の不足による進捗遅れ
特に、複数のプロジェクトを兼務するメンバーの場合、一つのプロジェクトに集中する時間が限られており、その結果、進捗が遅れがちになることが多いです。
部分的なコミットメントの考慮: 正しい工数の把握
各メンバーコミットメント比率を設定する
兼務しているメンバーがいる場合、各メンバーがどれくらい時間を割けるか(コミットメント比率)を考えることが非常に重要です。これによって、実際に使える時間を正確に知り、無理のないスケジュールを立てることができます。
兼務メンバーはプロジェクトに充てる時間が日によって異なることもあります。進捗を見積もる際には、各メンバーがプロジェクトにどれくらい時間を使えるのかを把握し、それを元に計画を立てる必要があります。
例えば、Aさんが1日8時間のうち50%しかこのプロジェクトに使えないなら、1日あたりの稼働時間は8時間 × 0.5 = 4時間です。
1日の7割を実作業時間とみなす
フルタイムで担当しているメンバーであっても、すべての時間をプロジェクトに使えるわけではなく、実際には7割くらいしか直接的なタスクに使えないことが多いです。これは、会議や管理業務、既存業務や問合せ対応、他のチームメンバーとのコミュニケーションなど、プロジェクトに直接関係しない業務が存在するためです。
例えば、フルコミットのハズのメンバーでも1日8時間のうち5.6時間が実際にプロジェクトに寄与する時間となります。一方、半分しかコミットできないメンバーの場合、1日4時間のうち実際に寄与する時間は7割(2.8時間)となります。
各メンバーのコミットメント比率と実際の稼働可能時間を考慮して、タスクの登録期間を調整します。この調整は、計画の柔軟性を確保するために、週次または月次で見直すと効果的です。
プロジェクトのために追加されているメンバーは、そのためのメンバーのため、1日のうち、80%, 90%を実作業時間として良いです。
進捗評価の再計算: 定量的な進捗評価方法
タスクの期間設定は、コミット率に応じて設定する必要があります。コミット率50%のメンバーで40時間のタスクを(1日4時間)で進める場合、期間は10日で設定します。この場合、5日間で予定進捗は50%です。
フルコミットでないメンバーが複数のタスク(例: タスクA, B, C)を持っている場合、それらのタスクがすべて同じ開始日と終了日で登録されることが多く、その結果、進捗がわかりにくくなることがあります。
このような場合、特にタスクが重なっていると、どのタスクにどれだけの時間を割いているのかが曖昧になり、プロジェクトの進行が遅れる原因になります。
タスク優先順位と時間計画の明確化
例えば、タスクA, B, Cが同じ期間に登録されている場合、見かけ上はすべてのタスクが進行中に見えますが、実際には進捗が偏ってしまうことがよくあります。このような状況を改善するには、まずタスクごとの優先順位を明確にし、それに基づいて各タスクに割ける時間を計画します。
例えば、タスクAが最も重要であれば、タスクAに集中する時間を確保し、それ以外のタスクには残りの時間を配分するようにします。具体的な例として、タスクAに1日2時間、タスクBに1.5時間、タスクCに0.5時間というように時間枠を設定します。
タスクごとに専用の時間を設けることで、どのタスクにどれだけの時間を使うかを明確にし、進捗の管理がしやすくなります。
ブラッシュアップタスクとしての登録
同じ期間に複数のタスクを登録する方がメンバーにとって管理が楽である場合や、何回かレビューを挟んで3〜4回ブラッシュアップするようなタスクになることもあります。このような場合、タスクをブラッシュアップごとに分けて「ブラッシュアップタスク」として登録し、それぞれの対応期間が重複しないようにすることで、進捗を明確にしやすくなります。
例えば、ウェブサイトのデザインを作成するタスクの場合、初回のデザイン案を作成した後、レビューを経てブラッシュアップ1(色の調整)、ブラッシュアップ2(配置の改善)、ブラッシュアップ3(最終調整)といった形で各段階に分けて登録します。
各ステップの進捗が明確になり、プロジェクト全体の進捗状況を把握しやすくなります。
タスクAの初回実施、レビュー、ブラッシュアップ1、ブラッシュアップ2というように段階ごとにタスクを設定し、各タスクの対応期間を明確にすることで、全体の進捗がわかりやすくなります。
バッファの確保とスケジュールの現実性向上
プロジェクト管理では、バッファの確保が非常に重要です。兼務メンバーがいる場合、予期せぬ遅れに備えてバッファを設けておくことで、全体のリスクを大幅に減らすことができます。
プロジェクト期間の80%の時点でリリースする部分の実装や受け入れテストを一通り終わらせ、残りの20%を追加の要望や予想外の遅れのリカバリー、ステークホルダー向けの動作確認期間などバッファとして使います。このようにすることで、タスクの遅れを厳密に管理しなくても、全体の進行を柔軟に調整することが可能です。
各タスクの◯%をバッファとして集めて全体バッファとし、タスクの遅れ分を全体から切り崩すバッファマネジメントは、面倒なのでやりません。適切なバッファ管理による予実の評価や管理コストはやりたいことではないからです。
進捗遅延や不具合、リリースに含めるべき追加要望に対応できる期間が用意されていれば、納期問題は解決します。
また、プロジェクトオーナーには、そのバッファより遅れることほとんどなく、それより早くリリースタイミングが訪れること可能性もあることをコミュニケーションしておくことが重要です。
バッファを設けるだけでなく、納期に対するリスクを減らすために、最初のリリースの優先順位に基づいてスコープを調整することも効果的です。必要な機能を確実に提供しつつ、プロジェクトの遅延リスクを相対的に最小限に抑えることができます。
特に重要なのは、スコープを決めることはより速く価値を届ける行為であり、バッファはあくまで納期を守るための手段であることです。スコープで最速で価値を提供し、フィードバックをもらうことを忘れずに進めることが重要です。
スコープの調整は、プロジェクトの進捗状況に応じて柔軟に行うことが求められます。
スクラム開発などアジャイルプロジェクトでは、バッファという考え方は推奨されていないので、プロジェクトの進め方によってはバッファ使用しなくても良いです。スクラム形式で行うにしても毎回ステークホルダーのレビューコストがかかります。
全体の受け入れテストまではスクラム形式やユーザーストーリーベースで開発を進め、バッファ期間で予想されるアクティビティを消化する方針で柔軟に対応したほうが現実的です。
兼務メンバーでもプロジェクトを成功に導くための鍵
兼務メンバーがいる状況でも、コミットメント比率に基づく進捗評価とバッファの確保、そして進捗管理ツールの活用を通じて、プロジェクトのリスクを最小限に抑え、成功に導くことができます。
今日からできる具体的なアクションとして、まずメンバーのコミットメント比率を再評価し、進捗管理ツールで稼働状況を見える化してみましょう。これにより、プロジェクトの進行を正確に把握し、リスクを効果的に管理できるようになります。また、バッファを設けて予期せぬ遅れに備えることで、プロジェクト全体の進行をスムーズに保つことができます。
さらに、チーム内でのコミュニケーションを強化し、進捗状況やリスクについてオープンに話し合うことも重要です。これにより、全員がプロジェクトの現状を理解し、適切な対策を講じることができます。兼務メンバーがいるプロジェクトでも、適切な手法を用いることで、成功への道を切り開くことができるのです。