プロジェクトを成功に導くためには、タスクの進捗状況やリスクを正確に把握し、未来を見据えた管理が重要です。本記事では、進捗率と対応期限というシンプルなデータを基に、プロジェクトの進行を的確に評価し、APIやGASを活用した自動化によって効率的な管理を実現するための実践的な手法を紹介します。タスク群全体の進捗を把握し、遅延リスクを早期に検知して対処する方法を解説します。
進捗率とは? 対応期限との関係
まず、進捗率はタスクの完了までの進行度を数値で表したものです。進捗率は、タスクの進行状況を定量的に把握するための基本的な指標ですが、単独ではプロジェクト全体の状態を評価することはできません。ここで重要なのは、進捗率が対応期限とどのように関連しているかです。
進捗率の計算方法
進捗率は、タスクの進行に応じて定量的に計算されます。例えば、以下のようなステータスに基づいて進捗率を定義します。
- 未着手:0%
- 開始:進行中(30-70%)
- 完了間近:進行中(70-90%)
- 完了:100%
この状態の定義は、未来予測に極めて重要な要素です。誰が見ても分かる状態の定義と進捗率を設定しましょう。
進捗率はタスクの進行状況に応じて増加し、タスクが完了するまでに最大で100%になります。
この進捗率を基に、タスクが対応期限内に完了できるかどうかを判断します。
進捗率と対応期限を基にしたタスクの評価(現時点:2024年9月10日とした場合)
サンプルデータを基に、進捗率と対応期限の関係を評価します。
タスク名 | 進捗率 | 開始日 | 対応期限 | 完了予定日 | 状況 |
---|---|---|---|---|---|
タスクA | 100% | 2024-09-01 | 2024-09-10 | 2024-09-10 | 完了 |
タスクB | 50% | 2024-09-01 | 2024-09-15 | 2024-09-13 | 順調 |
タスクC | 40% | 2024-09-05 | 2024-09-20 | 2024-09-25 | 遅延確定 |
タスクD | 90% | 2024-09-03 | 2024-09-12 | 2024-09-12 | ほぼ完了 |
タスクE | 50% | 2024-09-07 | 2024-09-18 | 2024-09-20 | 遅延リスクあり |
タスクF | 0% | 2024-09-08 | 2024-09-14 | 2024-09-19 | 遅延確定 |
タスクG | 20% | 2024-09-05 | 2024-09-16 | 2024-09-17 | 要確認 |
タスクH | 80% | 2024-09-01 | 2024-09-10 | 2024-09-11 | ほぼ完了 |
タスクI | 30% | 2024-09-06 | 2024-09-15 | 2024-09-17 | 要対応 |
タスクJ | 60% | 2024-09-05 | 2024-09-20 | 2024-09-25 | 遅延確定 |
- プロジェクトの全体デッドライン: 2024年9月30日
定量的な方法でタスクの残り営業日を算出する手順
1. 進捗率から残りの作業量を計算
進捗率が100%に達するまでの残り作業量をパーセンテージで表します。たとえば、タスクJの進捗率が60%の場合、残りの作業量は40%です。
2. 作業ペース(1日あたりの進捗率)を推定
1日あたりの進捗率は、これまでの作業ペースに基づいて計算します。具体的には、開始日から現時点までの営業日数を使い、その間に進んだ進捗率をもとに、1営業日あたりの平均進捗率を算出します。
$$1日あたりの進捗率 = \frac{現在の進捗率}{経過営業日数}$$
例えば、タスクJの進捗率が60%で、作業開始から10営業日経過している場合、1日あたりの進捗率は
$$\frac{60}{10} = 6\% $$
3. 残りの営業日数を計算
残りの作業量(40%)を1日あたりの進捗率で割り、残りの営業日数を求めます。
$$残り営業日数 = \frac{残りの作業量}{1日あたりの進捗率}$$
残りの作業量タスクJの残り作業量が40%で、1日あたりの進捗率が6%の場合、残り営業日数は
$$\frac{40}{6} = 約6.7日$$
これを7営業日とします。
4. 完了予定日を計算
現在の日付に、計算した残り営業日数を加算して完了予定日を算出します。
営業日ベースで計算するため、土日祝日を除いた営業日を考慮して加算します。
例えば、現時点が2024年9月10日で、残り営業日が7日と計算された場合、土日を除くと完了予定日は2024年9月19日になります。
この方法で、担当者に聞くことなく定量的に残りの営業日数と完了予定日を算出できます。プロジェクト全体の進捗管理がスムーズになり、遅延リスクを早期に発見しやすくなります。
状況の評価方法
進捗率はタスクの進行を示しますが、進捗が対応期限までに完了する見込みがあるかどうかが重要です。
「状況」は、進捗率と対応期限を基に以下のように定義します。これは、決め次第です。
- 順調: 完了予定日が対応期限内で収まる。(例:タスクB)。
- 遅延リスクあり: 完了予定日が対応期限をM営業日を過ぎる予定で遅延する可能性がある。(例:タスクE)。
- 遅延確定: 完了予定日が対応期限をN営業日を過ぎる予定で遅延が確定している。(例:タスクC)。
営業日を考慮した未来予測
進捗率と完了予定日を計算する際には、営業日を考慮する必要があります。土日や祝日は作業できないことを前提とし、実際に作業できる日数を基に完了予定日を算出します。
営業日ベースのリスク評価
- タスクB のように進捗率50%で、残り3営業日ある場合、進捗が順調に進んでおり、対応期限内に完了する見込みです。
- 一方、タスクC は進捗率40%で、残り営業日が5日あるものの、進捗が遅れており完了予定日が対応期限を5日超過する見込みです。このため、遅延確定と評価されます。
簡単に入力できるインプット情報
プロジェクトの進捗を分析するために、シンプルなインプット情報を基に、APIやGASを活用して自動化された分析が可能です。
- タスク名: 各タスクの名称。
- 状態(≒進捗率): タスクの状態を日々更新。タスクの状態に応じた進捗率は自動的に計算します。
- 開始日: タスクを開始する日、もしくは開始予定日。
- 対応期限: タスクごとの締め切り日。リスク評価の基礎データとして使用。
- 担当者: タスクを担当するメンバー名。リソース管理やタスクの進行確認に利用。
これらの基本的なデータを入力するだけで、タスクの進捗と遅延リスクがリアルタイムで可視化され、未来のリスクを正確に予測できます。
管理不可を減らすため、タスクの詳細の入力は登録者に任意で問題ありません。
書くとしても少なくともタスクの担当者がタスクの期待状態をメモする程度で良いです。
タスク群の進捗率と状況をどう算出するか
タスクごとの進捗率を評価した上で、タスク群全体の進捗率を算出することで、プロジェクト全体の進行状況を把握できます。この全体進捗率を基に、プロジェクト全体が順調なのか、遅延リスクがあるのかを評価することが可能です。
タスク群の進捗率の計算方法
タスク群の進捗率は、各タスクの進捗率の平均値を計算して算出します。ただし、単純な平均ではなく、タスクの重要度や依存関係がある場合には、それらを考慮した加重平均を使うことが理想です。しかし、実務ではすべてのタスクに対する詳細な依存関係や優先度をつけることが困難な場合が多いため、ここではシンプルな平均を用います。
進捗率の単純平均計算方法
各タスクの進捗率の合計をタスクの数で割り、全体の進捗率を算出します。
$$タスク群の進捗率 = \frac{各タスクの進捗率の合計}{タスクの数}$$
例として、上記の10個のタスクの場合、進捗率の合計は以下の通りです:
$$進捗率の合計=100+50+40+90+50+0+20+80+30+60=520$$
タスクの数が10個なので、全体の進捗率は
$$\frac{520}{10} = 52\%$$
このプロジェクト全体の進捗率は52%です。
タスク群全体の完了予定日をどう算出するか
タスク群全体の進捗率は、タスク群の全体的な進行状況を把握するために非常に重要ですが、タスク群の完了予定日を算出する際には直接的には不要です。
そして、タスク群全体の完了予定日はそのタスクの中で最も遅い完了予定日になります。
タスク群全体の進捗率に基づいて、タスク群全体の完了予定日を計算する方法を説明します。これは、各タスクの進捗率と残り作業量を加味し、全体としてプロジェクトがいつ完了するかを見積もるための重要なプロセスです。
タスク群全体の完了予定日の算出手順
- タスクごとの残り作業量を算出
- 各タスクの進捗率に基づいて、タスクごとの残り作業量を計算します。残り作業量は、100%からそのタスクの現在の進捗率を引いた値です。
- 例: 進捗率が60%のタスクJでは、残り作業量は40%です。
- タスクごとの残り作業日数を計算
- 先に説明した通り、各タスクの1日あたりの進捗ペースを推定し、残りの作業量をそのペースで割ることで残り営業日数を算出します。
- 例: タスクJの残り作業量が40%で、1日あたりの進捗率が8%であれば、残り5営業日で完了すると推定されます。
- 全タスクの完了予定日を計算
- 各タスクの完了予定日を計算した後、それらのタスクの中で最も遅い完了予定日がタスク群全体の完了予定日になります。
- 例: 各タスクの完了予定日が以下の場合、最も遅い完了予定日は2024年9月25日(タスクJ)であるため、タスク群全体の完了予定日は2024年9月25日となります。
タスク群全体の状況を評価する方法
次に、プロジェクト全体の状況(順調、遅延リスクなど)を評価します。ここでの判断基準は、全体の進捗率とタスクごとの対応期限との関係を基にします。
- 順調: タスク群の進捗率が50%以上で、完了予定日がプロジェクト全体のデッドラインに収まっている。
- 遅延リスク: タスク群の進捗率が50%未満であり、完了予定日がプロジェクトのデッドラインを超える可能性がある。
- 遅延確定: タスク群全体の進捗率が低く、完了予定日がデッドラインを超えることが確定している。
タスク群全体のリスク評価
プロジェクト全体のリスク評価に関しては、タスクごとのリスク評価とタスク群全体の進捗状況の両方を考慮します。進捗率が低いタスクが多く、対応期限に対して遅れているタスクが複数ある場合、プロジェクト全体の遅延リスクが高まります。
進捗率が低いタスクが多い場合
例えば、タスクFやタスクGのように進捗率が0%や20%と非常に低いタスクが複数ある場合、プロジェクト全体の進行に大きな影響を及ぼします。これにより、プロジェクト全体の進捗率が抑えられ、遅延リスクが高まります。
対応期限を超過しているタスクがある場合
例えば、タスクCやタスクJのように、完了予定日が対応期限を超えているタスクが複数ある場合、これもプロジェクト全体の遅延リスクを高める要因です。これらのタスクが修正されない限り、プロジェクトの完了は遅れることが確定しています。
APIやGASを活用した自動化による効率化
ようやく、自動化の話です。
進捗率や対応期限を基にしたリスク評価を自動化するためには、APIやGAS(Google Apps Script)の活用が有効です。
ただ、ここまで具体的な自動化について説明して来ませんでした。なぜか。
自動化よりはるかにプロジェクトの客観的な評価とハンドリング、そのために必要なインプットをいかにカンタンに収集できる仕組みを構築することが重要なためです。いくら高尚な評価方法を持ち合わせても、そのために現場負担を増やしたり、管理コストで目的達成のリスクが増えるのは本末転倒です。
タスクの進捗や期限を自動的にモニタリングし、リスクが高まった際に自動で通知を送る仕組みを構築することが可能です。
自動化の具体例:
- APIを使ってタスクの進捗データを取得し、期限が迫っているタスクの遅延リスクを自動で計算します。
- 遅延リスクが高いタスクには、自動的に担当者にリマインドが送信される設定を行います。
終わりに:進捗率と期限を基にしたシンプルで効果的なリスク予測
プロジェクトを成功させるためには、タスクの進捗率と対応期限を的確に評価することが不可欠です。これらのシンプルなデータに基づいてリスクを判断し、さらにAPIやGASを活用してプロジェクト管理を自動化すれば、効率的かつ正確な進捗管理が実現します。タスクごとの進行状況だけでなく、タスク群全体の進捗を把握することで、リスクを早期に検知し、適切な対策を講じることができます。シンプルな手法を駆使して未来のリスクに備え、プロジェクトの遅延を防ぎましょう。