プロジェクト管理において、スプレッドシートを使いながらも、手動での進捗更新に時間がかかり、ミスが発生しやすいと感じたり、タスクの見落としや情報共有の煩雑さなどで「うまくいかない」と感じている方も多いのではないでしょうか?
スプレッドシートは非常に便利なツールですが、タスク管理や進捗の可視化には限界があります。
この記事では、プロジェクト管理の中でスプレッドシートが得意とする部分と苦手とする部分を明確にし、効率的なタスク管理を実現するためのタスク管理ツール(Backlogなど)の使い分け方を紹介します。タスク管理ツールを使うことで、手間がかかる手動作業を減らし、プロジェクト全体の透明性と効率性を向上させることができます。さらに、タスク管理の質を高め、チームのパフォーマンスを最大化するための具体的な方法を提供します。
Excelやスプレッドシートと、タスク管理ツールをどう使い分けるべきかが明確になり、プロジェクトをよりスムーズに進めるための具体的な方法が分かります。最終的には、チーム全体の生産性を最大化し、プロジェクトの成功率を高めることが目指せるようになるでしょう。また、どのようにプロジェクトのリスクを早期に検知し、適切な対策を講じるかといったプロアクティブな管理方法についても触れています。
クラウド版の表計算ソフトの強みと適した使い方
数値データの整理と分析
スプレッドシートは計算やデータ整理において強力なツールであり、柔軟な計算機能と視覚的なデータ整理能力が優れています。
例えば、予算管理や情報分析、費用の見積もりなど、数値を扱う場面でスプレッドシートは大活躍します。また、縦軸と横軸で整理するマトリクス分析など、表形式で情報を扱う際にもその視覚的な整理能力が有効です。これにより、複雑な数値データの分析や視覚化が可能となり、ビジネス上の意思決定においても大きな助けとなります。
普段はめちゃくちゃスプレッドシート使ってます。何か整理しようと思ったら真っ先にスプレッドシートを「無題」で作成しています。
さらに、スプレッドシートはチーム全体でのデータ共有や共同編集が容易であり、比較的小規模なプロジェクトやデータ分析タスクにおいても有用です。
データ共有と共同編集の強み
スプレッドシートのカスタマイズ機能を使えば、データ入力の自動化や、簡単なマクロを組んでルーチンワークを効率化することも可能です。例えば、データ入力の際に自動で特定の計算を行うマクロや、特定の条件に基づいてデータを自動的に分類するマクロを作成することで、手動作業を大幅に削減できます。具体的には、請求書のデータを自動で集計するマクロや、定期的なタスクのリマインダーをスプレッドシート内で自動的に生成するマクロを活用することが考えられます。これにより、単調な作業を効率化し、より重要な業務に時間を割くことができます。
でも正直、マクロは行列の追加削除の考慮が面倒だからあまり使わない。。
スプレッドシートのもう一つの強みは、直感的なグラフ作成機能です。
簡易なグラフ作成機能によるビジュアライズ
数値データを迅速に視覚化し、プロジェクトに関わる関係者にわかりやすくデータを提示することができます。グラフやピボットテーブルを活用することで、データ分析をスピーディに行い、プロジェクトの方向性を判断する際に役立ちます。
結論として、スプレッドシートは数値データの整理と分析において最適であり、特に計算や見積もり、データ整理といった場面でその強みを発揮します。また、データの視覚化や小規模なプロジェクトでの共同作業においても有効に活用できます。
しかし、大規模なプロジェクトや複雑なタスク管理には限界があり、その点については専用のツールが必要となることを理解しておくべきです。
スプレッドシートの限界とタスク管理の課題
タスクごとでの議論や相談がしにくい
これが一番ネックです。
はっきり言って、WBSっぽいタスクシートを用意して各自タスクの担当し、各自でタスクの状態を更新するなら、Excelやスプレッドシートで事足ります。
ただそれだけだと、タスク毎にどう進めるとかどういう完了状態にするとかコミュニケーションがしづらいです。
実際の現場では、タスク担当と担当の上司やリーダー、担当とは別の部署の関係者と会話が発生します。このときに、Excelやスプレッドシートのタスク管理だけだと、TeamsやSlackなどのコミュニケーションツール、これらのツールがなければ、メールで「◯◯のタスクについて相談があります。」などやり取りしていると思います。
この当たり前にみえる小さなやり取りがチリツモで馬鹿にならない間接コストが本来注力するべきタスクのリソースを削っていきます。
プロジェクト管理でのスプレッドシートの限界
MicrosoftはExcelとは別に、プロジェクト管理専用のサービスであるProjectを提供しています。Projectは、タスクの依存関係管理やリソース割り当てといったプロジェクト管理に必要な機能を備えており、Excelで行うには難しい複雑なプロジェクトの管理を支援します。Googleにはプロジェクト管理専用のサービスはありませんが、スプレッドシートを用いたプロジェクト管理には限界があります。
スプレッドシートにもプロジェクト管理用のプラグインとか出てますが、未来予測にはまだ足りない印象。
例えば、プロジェクト管理の本質はQCD(品質・コスト・納期)の期待値を達成することであり、そのために「未来を予測できること」や「リスクを早期に検知して予防対策を講じること」が求められます。これらを実現するためには適切な計測と分析が必要ですが、Excelやスプレッドシートではこれを行うのは非常に困難です。計測や分析をするために情報に集中したいのに、カラムの列の位置やどのカラムのタスクを何行目から何行目まで対象とするなど、知らなくても良い行列の位置を気にする体験がそもそもよくありません。
タスクの洗い出しやタスク状態の更新などのタスク管理と、未来を予測するためのデータ分析はやるなら別々のツールで活用するべきです。
幸い、このサイトで紹介しているBacklogなどのプロジェクト、タスク管理ツールは、そのどちらにもそれぞれの体験に対応できる機能を提供しています。
タスク依存関係とリソース管理の難しさ
タスクの依存関係の把握は納期の予測に重要です。ただすべてのタスクに対して行うとリターンは少ないです。なので、そこまで気にしなくてよいです。
重要なんだけど、タスクの依存関係を把握するにはリソース的にウォーターフォールのような進め方でないと厳しい。そのため、もっとも納期に影響する、自部署が制御できない他部署・他社のタスクを含めた関連タスクの依存関係に絞って把握しましょう。
タスク依存関係の重要性:料理の例で理解する
タスクの依存関係を把握することは、プロジェクト全体のスムーズな進行にとってとても大切です。簡単に言うと、タスクの依存関係とは、「ある作業が終わらないと次の作業が始められない」という順番のことです。
例えば、料理を作るとき、食材を切る(タスクA)が終わらないと、炒める(タスクB)ことができないのと同じです。ここで、タスクAとタスクBには依存関係があります。
依存関係を知ることのベネフィット
- 無駄な待ち時間を減らす
依存関係を把握することで、次に何をするべきかが分かります。例えば、料理の例で考えると、食材を切る人が遅れてしまうと、炒める人が待たなければなりません。でも、依存関係を事前に知っておけば、どのタイミングで他の作業を始められるかがわかるので、無駄な待ち時間を減らせます。 - プロジェクト全体の遅延を防ぐ
依存関係を理解することで、どのタスクが他のタスクに影響を与えるかを把握できます。例えば、ご飯を炊く(タスクC)、食材を切る(タスクA)、具材を炒める(タスクB)という料理の一連の流れを考えてみましょう。ご飯を炊くのには時間がかかるので、最初に炊き始めないと、食事全体の準備が遅れてしまいます。もし、食材を切るのが遅れてしまうと、その後の具材を炒める作業にも影響が出ます。このように、どのタスクが進捗に最も影響を与えているのかを把握することで、重要なタスクを優先して進められるので、遅延を防ぐことができます。 - 効率的な作業計画が立てられる
依存関係を知ることで、タスクの順番を上手に組み合わせられます。例えば、ご飯を炊いている間に食材を切ることができれば、時間を無駄にせずに準備ができます。同じように、プロジェクトでも依存関係を知っておくと、できることを先に進めながら他のタスクを待つなど、効率的な計画が立てられます。
なぜ依存関係を知る必要があるのか
依存関係を把握することにはコストも伴います。特に、自分が直接制御できない範囲のタスクがある場合、その依存関係を理解しておくことは非常に重要です。例えば、他部署や他社が関与しているタスクが自分たちのタスクに影響を与える場合があります。他部署や他社の意思決定プロセスやそのプロセスにかかる期間は、自分たちでは制御できません。そのため、どのようなプロセスがあるのか、どれくらいの時間がかかりそうかをあらかじめ知っておくことで、より現実的な計画を立て、リスクを軽減することができます。
依存関係を知ることは、プロジェクト全体のスムーズな進行と計画の成功のために非常に重要です。これを知らないと、どのタスクが進捗を制御しているのか、何がどれだけ遅れているかや、どの作業がボトルネック(遅れの原因)になっているかを把握できません。例えば、ご飯を炊くのが遅れると、他のすべての作業が完了しても食事を提供できません。このように、どのタスクが全体の進行に最も影響を与えるかを知ることで、計画が大幅に遅れることを防ぐことができます。
依存関係を理解することで、タスクがどう繋がっているのか、どれが優先されるべきなのかが明確になり、プロジェクトをスムーズに進めることができるのです。料理の例で言えば、食材を切る、具材を炒める、ご飯を炊くといったタスクの順番と、それぞれのタイミングを上手に調整することで、効率的に料理を完成させることができます。
タスク管理ツール(Backlogなど)の優位性
情報の一元管理と提供APIによってプロジェクト分析ができる
タスクの一元管理としては、表計算ソフトもできます。ただこのタスク情報に対してBacklogではそれにアクセスするためのAPIが用意されています。そのため、このAPIを利用して、プロジェクト分析のためのデータ取得や加工を行えます。取得・加工したデータをレポーティングに利用したり、分析軸によっては担当者にタスク通知することができます。
情報の一元管理によって、ユーザー向けに見せ方を変えられる
Backlogのようなタスク管理ツールを使うことで、タスクという登録データを元に様々なデータの見せ方を提示できます。
プロジェクトに参加しているメンバー向けだと、カンバン形式のボード機能でタスクにかけるキャパシティがいま適切か各自が把握するのに最適です。管理者向けだと、ガントチャート、課題一覧、APIを活用したタスクのデータ分析が適しています。
進捗管理が大幅に楽になります。例えば、タスクの進捗状況が自動的に更新され、各タスクの状態をリアルタイムで把握できるため、手動での確認作業が減り、全体の管理負担が軽減されます。自動化機能やコミュニケーション機能が充実しているため、手動更新の手間を減らし、情報共有がスムーズに行えます。
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ガントチャートも見たい軸で進捗状況を絞って表示することができるため、目的に合わせた表現で参加者の認識相違を減らすこともできます。これにより、プロジェクト全体の進捗を一目で定性的に把握でき、視覚的に確認することが容易になります。
ガントチャートの基本と効果的な使い方: 定性・定量評価を用いたプロジェクト管理
依存関係については、Backlog自体では管理が難しい部分もありますが、担当者との確認や、各タスクの予定時間から完了予定時期を予測するなどの作業は必要です。どのツールを使っても依存関係の把握にはインプットの収集が求められるため、優先度を下げたほうが現実的かもしれません。
各タスクにコメント機能がついており、やり取りがタスク単位で情報がま止められるため、プロジェクト内での情報共有が効率的に行えます。これにより、プロジェクトに関する最新の情報がチーム全員にリアルタイムで共有され、コミュニケーションもスムーズになります。Backlogのようなツールには通知機能があり、タスクの変更やコメントが追加された際に関係者に自動的に通知が送られます。
BacklogからメンションでSlackのチャンネルに通知する方法
通知機能によるコミュニケーションの改善
このため、関係者全員が常に最新の状況を把握でき、意思決定のスピードが向上します。タスク管理ツールはまた、ファイルの共有機能やドキュメント管理機能も備えており、プロジェクトに関連する資料を一元的に管理することができます。これにより、情報の検索が容易になり、必要な資料を迅速に見つけることができるため、チーム全体の効率が向上します。
また、タスク管理ツールはプロジェクトのリスク管理にも役立ちます。
リスク管理の強化
リスクの早期検知と対策の実施がプロジェクトの成功には欠かせませんが、タスク管理ツールはタスクの遅延やリスクの兆候を視覚的に示し、必要な対策を迅速に取ることを支援します。これにより、プロジェクトのQCDを効果的に管理し、予期せぬ問題への対応力が向上します。
リスク管理は、プロジェクト開始前、進行中、リリース後に発生しうるリスクとそれに対する予防策・対応策、対応優先度、対応時期を名確認することですね。これは、Excelやスプシの方が良いかも。理由は、リスク評価でリスクスコアを計算式を元に算出する必要があるためです。残念ながら、Backlogには項目計算機能がないのです。(Notionはある、Notion最強だけどこれはまぁ小規模や個人用です)
結論として、タスク管理ツールを使うことで、チーム全体の効率が向上し、進捗管理が容易になります。特に、大規模なプロジェクトや複数人での共同作業においてその効果が顕著であり、タスクの進捗状況や関係者間のコミュニケーションを効果的にサポートします。タスク管理ツールは、プロジェクト全体の透明性を高め、リスク管理を強化し、プロジェクトの成功率を向上させるための不可欠なツールです。
Excel・スプレッドシートとタスク管理ツールの併用方法
ツールの役割分担と最適化
スプレッドシートとタスク管理ツールは役割分担して併用すると効果的です。各ツールの得意分野を活かすことで、業務効率を最大化できます。
例えば、Excelは予算計算やデータ整理に使い、Backlogはタスク割り当てと進捗管理に使うことで、それぞれの得意分野を最大限に活かすことができます。具体的には、まずExcelでプロジェクトに必要なリソースの見積もりを行い、その後、タスク管理ツールで各タスクの割り当てや進捗管理を行うと、業務の流れがスムーズになります。
また、既存のスプレッドシートからタスク管理ツールへの移行には、まずデータの整理から始め、チーム全体での合意を得ることが重要です。
スプレッドシートからタスク管理ツールへの移行プロセス
この移行プロセスには、データの洗い出し、重複の排除、データの分類と優先順位付け、そして確認作業が含まれます。これにより、移行がスムーズに進み、チーム全体の理解と協力が得られます。さらに、移行後はタスク管理ツールの自動化機能を活用することで、手動作業を減らし、プロジェクト全体の生産性を向上させることができます。
併用時のベストプラクティス
例えば、数値的なデータはスプレッドシートで管理し、タスクの進捗やコミュニケーションはタスク管理ツールで行います。また、定期的な会議の議事録はタスク管理ツールに保存し、進捗状況に応じてタスクを再割り当てすることで、全員が同じ情報にアクセスできるようにするなどの具体的な役割分担が効果的です。例えば、数値的なデータはスプレッドシートで管理し、タスクの進捗やコミュニケーションはタスク管理ツールで行うことで、情報の一貫性とチーム内の透明性を確保することができます。